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2006.09.26

ありがとう、YS-11

今月末で、国内旅客路線から引退です。
http://www.jac.co.jp/entertainment/aircraft_ys11.html
最終便は沖永良部~鹿児島、だそうです。

1962年から
主にローカルの空港間を飛び回り続けていました。

私の田舎でもある北海道は、
特にそういったフライトが大変重要な地域でした。

70年代、まだ千歳以外の空港がジェット化されていない頃、
私も、数多くこれらの機体にお世話になったものでした。

子供の頃よく乗った空の旅は、今でも鮮明に思い出されます。

今はJALの一部になってしまった旧JASが
さらに昔のTDA(東亜国内)で、
オレンジの線か赤と緑の線の機体だった頃のお話。

まだ本当に国際空港だった羽田空港の
一番端っこの煤けた国内線ターミナルで
角を丸めた搭乗券に座席番号のシールを貼ってもらい、
搭乗口のすぐそばで横付けのタラップから乗り、
プロペラの共鳴する音を響かせながらフワリと飛び立つと、
ウンウン言いながら巡航高度2500mを目指して上昇、
プロペラ先端が空気を切って飛行機雲を螺旋状に引いていく。

関東平野をゆっくりと北に向かい、
白河の関を越え、会津の山々を見下ろし、
長い長い東北の山地をなめるように飛び越え、
岩手から青森を抜け、連絡船の航跡を眼下に海峡を越え、
羊蹄を左手に見て旋回し、ひらりひらりと十勝平野に降りていく。
林や草原を間近に見ながら滑走路に滑り込むと、
プロペラの角度がぐるりとひねれて
フルスロットルで制動をかけるのがすぐそこに見える。
ゴトゴトと小さな車輪をきしませながら、自力で駐機場に到着する。

古い帯広空港は、短い滑走路で砂埃の舞う、小さな空港でした。
迎えに来ていた祖父母が駐機場すぐ脇に車を止め、
フェンスの外で待っているのを
タラップを降りるまもなく見つけることができる、
そんな、のどかな時代でした。

あのころ、巡航速度400km/hのYS-11では
直行便でも3時間半かかって、十勝へ向かうのでした。

長旅にお腹が空いてしまうので、
羽田で必ず箱入りサンドイッチを買って持ってましたっけ。
当時としては珍しく、スモークサーモンが入っているのが
とても美味しく、飛行機に乗る楽しみの一つでした。

そして、機内で配るカンロあめやサクマのイチゴミルク、
与圧の大してかからない機体ですから耳痛予防のためなのですが、
子供心には、なんだかとってもうれしいものでした。

とても頑丈な設計で長持ちした機体なんだそうですが、
お手洗いへ行くと雨漏り(空調の結露?)の跡があったり、
2重窓ガラスの内側がだんだん曇ってきたり・・と、
愛嬌のあるところもありましたねぇ(^^;;。

あれから既に30年以上経ちました。
今は離島や近距離を除けばほぼすべてがジェット路線。
(とかち)帯広線もYS-11がDC-9になり、
空港も移転して、A300になり、-600になりました。
もちろん、短距離コミュータではSAABやボンバルディアなどの
新世代プロップも活躍していますが、
都市間の空の旅でも「のどかな大冒険」であった日々は、
もう遠い昔になりましたね。

2006年9月30日、
ローカル航空の歴史を作って、
私の子供時代(と家族の歴史)を支えてくれたYS-11は
日本の空より引退します。

おつかれさま、ありがとうね。

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Comments

10月号のカペタ・・・じゃなかったラピタは読みました?
絶滅危惧種特集です。

Posted by: Tak | 2006.09.26 09:49 AM

どもー。

そーですねー、
ある意味、絶滅しちゃいましたね。
#絶滅という言葉は好きではないですが。

YS-11は、動態保存する機体があってもいいと思うんですよね。
LufthansaはJunkers(Ju52)を観光用に飛ばしてたりします。あれなんか戦前のものです。かの国も我々と同様、戦後一時期は航空機開発できなかった歴史を持ちながら、それ以前のものも大事にまだ飛ばす気です。
YSは戦後の平和な航空機産業の先駆けですし、しかも官用はまだ飛んでるんですから、今のうちにそういった手筈を画策しとくのが必要かも。

クルマ然りですが、自国の産業(工業)遺産を大事にしないのはイカンですよ、うん。

Posted by: lucifer | 2006.10.02 11:39 PM

はじめまして、アスランマリオと申します。
当方のブログにお越しいただき、また、TBしていただきありがとうございました。
ついに日本の民間航空から絶滅してしまいましたね。でも、この思いでは何時までも残ると思います。

Posted by: アスランマリオ | 2006.10.28 01:13 AM

アスランマリオさん、
コメントありがとうございます。

民間航空からは去ってしまいましたが、あのビーンとしたターボプロップの響きは大好きなもんで、基地祭などでYS-11に会いに行きたいものです。

Posted by: lucifer@W-ZERO3 | 2006.10.30 09:01 PM

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今日はパネルト-ク、懇親会編です。 パネルト-ク ★第一部「YS11が長期間飛べた理由」 左側・塩原竹治(しおはら たけじ)氏、設計を担当、世界デモフライトにも参加 右側・沼口正彦(ぬまぐち まさひこ)氏、テストパイロットとして開発を担当。世界セ-ルスのデモフライトパイロットも勤める。 沼口さんは東京オリンピックの聖火も運びました。アメリカに行った当時は日本製なんて馬鹿にされていたそうですが一方で興味しんしんだっためんもあったそうです。 塩原さん、主翼・胴体の接合に苦労し... [Read More]

Tracked on 2006.10.28 01:07 AM

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