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2010.04.25

Green is Green

以前のエントリーで辛辣な事を書いてますが、
かと言ってあそこら辺に居るエンジニアに
苦言ばっかりな訳でもないのだ。

むしろ、そこでそれだけ深く追求し続けていることは
エンジニア同志としては、敬服と尊憧に値する。

ある程度、規模があるから実現できている事も多い。
研究所なり研究員(Researcher)という仕組みを維持していること、
巨大な資本と実用化(ターゲット)を見据えた計画に乗れること、
ある分野ではかなりの研究と実績を残せていること、
あの地域で肩を並べるエンジニア達のレベルは、高い。

その分野は、その素材は、
これからの身の回りを、変えるかもしれない。

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私の目の前に、緑色の物体があった。
持つ角度を変えると薄黄色から青緑に光を透過する、小さな薄片。

普段は黒銀色のブツを扱う目には、とても美しく映る。

炭化珪素、SiCの単結晶、新しい半導体デバイスの材料だ。

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まだ駆け出しの頃に実験用に手に入れたものは、
こんなに透明で美しいものではなかった。
不可思議な模様やムラを中に含んでいて、古いステンドグラスのよう。
サイズもはるかに小さく、まるで子供のビスケットのようだった。

ある実験の際に、ステージからツイーザ(ピンセット…ね)で
回収しようとして落として割ってしまった。
立方晶の世界に慣れている感覚では
思ってもみない方向で砕けてしまう。
結晶系が六方でしかも面の角度が微妙にずらしてあるのだ。

こんな硬いものがこんな容易に砕け散る??
いや、あまりに硬いから逃げがないのだ、と思った。
今から思えば結晶欠陥だらけで、
あらぬ方向にクラックが進んだのかもしれないが。

ともかく、割ってしまったものはしょうがない、
ほとんど破片を回収しパーティクルが散らぬように掃除してると、
「おまえはコイツがいくらするか知ってるか?」と。
確かに高価な素材なのは意識にあったが、その値段を聞くと腰が抜けた。

この汚い焦げたビスケットみたいのが
排気量3リッタークラスのセダン一台に匹敵するお値段と…。

割った後数日は、クビになるんでないかとヒヤヒヤした
実は、回収した破片も別の実験に使えたのでなんとかなった。
カケラすらそれほどに貴重で、入手困難であったから。

今はより大きく、濁りなく均一な基板を用意できる、
(それは欠陥が少なく歩留まりが高められる事を意味する)
モノの姿自体が、この十数年の努力と進歩を物語る。

価格も下がった、とはいえ最近出回っているものでさえ
まだまだ、良品は中古の軽自動車くらいするんだけどねぇ。

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コイツの用途は、光るモンか、動くモンだ。

あっちこっちで報道されているからもうご存知と思うが、
特に動くモンを動かすための素子として
従来の素材から飛躍的に性能アップする。
えぇ、電気自動車にはお待ちかねの重要な素子。

 (どういった特徴があるかはGoogleででも
  調べていただければ、山ほど出てくるだろう・・・)

彼らが血眼になって研究を続けたのには、
使用目的がメインのビジネスに直結するからであるし
100年以上続いたエンジンの世界にゴールが見えているため。

とはいえ、そこを流す電力の源は
どっかで何らか発電して持ってくるのだがね。

しかし、与えられたぶんを使うまでに損失が少なければ、
それはそれ、進まなくてはいけない道で
エネルギーを使いたくなきゃ動かなきゃいい、って訳にもいかないのが
人間のサガというか性分というか。

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まずは、この緑色の物体を使いこなしてみることが
どうにか人類がGreenに生き延びていける方法の
ひとつの手段なのかもしれない。

今すぐに全部とっかえられるほど潤沢ではないのが
また頭の痛い所であって、そのために奔走するってのが
半導体屋を生業としている僕らに降ってきた話、なのだ。

需要と供給という地点までまだかなりある、
「技術が需要を呼ぶ」と言えるにも程遠い。

しかし、今までのデバイスとちょっと違うのは
「これで何をしたいか」は、相当はっきりと見えていること。

本当にガラっとヨノナカが変わるかはわからない。
だけれど、緑色のソレが密かに中に入っている機器は
しばらくすると着々と増えていく(はず)、
そういう時代の現場に、足を踏み込もうとしているのだ。

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